研究への視座

われわれの研究室では、専門家と非専門家のコミュニケーションの回路をつくる研究をしています。この研究は、専門家社会が少しだけ専門家以外に扉を開いた「医療崩壊」「司法制度改革」をきっかけとしています。専門家社会への批判は繰り返し行われてきました。少し前になりますが、ジャーナリストの柳田邦男は「専門家社会のブラックホール」として問題を指摘し、専門家集団特有の価値判断や行動基準による行動傾向をその原因に挙げ、専門家に対して客観的な視点を持ちながら当事者をめぐる状況に配慮することを求めています。

 ではこの繰り返しの批判は、専門家社会を改善する建設的な方向へ向かったのでしょうか。2016年末オックスフォード辞書がその年のことばとして“post-truth”を選びました。語義は、“Relating to or denoting circumstances in which objective facts are less influential in shaping public opinion than appeals to emotion and personal belief. ”と説明されています。「客観的事実(“objective facts”)」とは何かは難しい問題ですが、専門家社会のコンテクトで考えると、専門家がつくってきた知識がそれに当たり、“post-truth”時代は専門家の知識ではなく感情や個人の考えが影響力を持つようになった時代と考えることができます。

 われわれの研究室では、“post-truth”で特徴づけられる時代において、専門家が専門分野の知識をどのように非専門家と共有すればよいか、非専門家が専門家の状況、知識をどのように理解すればよいか、専門家と非専門家との持続的なコミュニケーションを支えるためには何が必要かについて実証的に議論を深めていきます。

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