Ishizaki Lab. | research

東京大学大学院 情報学環・学際情報学府
石崎雅人研究室  


概 要

社会とコミュニケーション

 ジャーナリストの柳田邦男氏は、病院のミス隠し、警察や自衛隊の不祥事隠しなどの底流にある
問題を、「専門化社会のブラックホール」と指摘しました(柳田邦男「相次ぐ不祥事隠し 専門化が
招いたブラックホール」、朝日新聞夕刊、2000年6月8日)。専門家集団特有の価値判断や行動基準
による行動傾向をその原因に挙げ、専門家に対して、客観的な視点を持ちながら、当事者をめぐる
状況に配慮することを求めています。

 柳田氏の記事が出てから約10年がたった現在においても、氏の指摘の重要性は全く変わりません。
しかし、問題は、専門家の姿勢、努力によってのみ解決するほど簡単ではないことがわかってきて
います。たとえば、医療の分野では、「医療崩壊」が叫ばれています。多くの医療従事者が献身的
な努力により質の高い医療を提供している一方で、国の経済状況の悪化による医療費の削減を端緒
として、医療従事者の厳しい勤務環境がさらに厳しいものとなるとともに、公共の領域にあるべき
医療の問題が、医療従事者、患者個人の問題においてのみ捉えられることにより、双方が不安感を
持ち、相互不信におちいっています。

 司法の分野では、司法制度改革の一貫として、裁判員制度の導入や裁判外紛争解決(ADR)の
利用拡充が図られています。一般の人にとっては、裁判や紛争解決に関わるというのは非日常的な
出来事であり、自分たちが参加できる制度設計がなされても具体的にどのようにすれば納得できる
問題解決がなされるのかがわからないため、期待感よりは不安感のほうが高くなっています。司法
関係者にとっても不安感が高いのは同様です。抽象的なレベルでは、一般の人の視点、感覚を反映
するのがよいことは議論の余地はありませんが、そもそも一般の視点、感覚とは具体的にはどのよ
うなものなのか、どのような案件であっても反映するのがよいのか、どのようにして反映させれば
よいのかはわかっていないのが現状です。

 われわれの研究室では、コミュニケーションの基礎理論を基盤として、医療、司法、行政といった
専門家社会の問題を、コミュニケーション環境を含め、専門家と非専門家とのコミュニケーションを
いかにデザインするかという問題として取り組んでいきたいと考えています。

研究テーマ例

医療におけるコミュニケーション研究

 ・協働の医療を支える患者と医師のコミュニケーション
 ・医療従事者間の知識共有

司法におけるコミュニケーション研究

 ・紛争解決に対する法律家の態度と相談者とのコミュニケーション
 ・裁判員裁判制度における裁判官から裁判員への情報提供

福祉におけるコミュニケーション研究

 ・超高齢社会におけるつながりの質を考える

コミュニケーション基礎理論の研究

 ・コミュニケーション支援のあり方
 ・コミュニケーションにおける同調
 ・多人数コミュニケーションにおける談話構造と非言語行動との関係